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百花

表紙の黄色が哀しくなるほど綺麗だった。
 
 主人公葛西泉はレコード会社に勤める37歳の男性。もうすぐ一児のパパになる。母百合子はシングルマザーとして泉を育ててきた。子供たちにピアノを教える美人な先生で、泉はそれが自慢だった。ある出来事が起こるまでは・・
 母百合子が認知症を患い次第に記憶をなくしていく一方、泉はこぼれ落ちていく思い出を必死でかき集めていく。晩年の母、若き日の母、息子と二人で生きていくことを決断した時の母、そしてあの時の母。忘れていた記憶をたぐりよせていく。母がすべての記憶をなくし、息子のことや自分自身のことすらわからなくなる日が来ても母との思い出は決して消してはいけない。母との思い出をなくしてしまうことは、母を失うことと同じだから。
 
 数々の思い出は花火に似ている。次々と打ち上げられ百の美しい花を咲かせるが一瞬にして消えてしまう。ただ美しかったということだけが記憶に残るのである。

紹介文 山下

著者 : 川村元気
出版社 : 文藝春秋

在庫状態 : 在庫有り

販売価格  ¥803(税込)

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