文芸・小説

陰陽師 水龍ノ巻

平安時代、人も鬼ももののけも、同じ都の暗がりの中、時には同じ屋根の下、息をひそめ一緒に住んでいた。鬼やもののけはそこかしこにいた。なぜなら人の心にある憎しみ、悲しみ、妬み、うらみ、それらが産み出すのだから。
陰陽師とは、幻術、風水術、占星術をつかさどり、吉凶を言い当て天皇に仕える専門職の役人で安倍晴明もその一人。本作品は晴明が親友源博雅と力を合わせ、鬼や死霊などのさまざまなもののけが引き起こす、この世ならぬ不思議な難事件を鮮やかに解決していく物語である。二人の活躍ぶりは胸のすく思いであり、また、各章の書き出しの季節の描写が繊細で美しく、これもまた読みどころの一つとなっている。たとえばこうだ。
「もくせいの花の匂いが漂っている。どこか甘やかで消えかけた哀しみのような香りが風にのって運ばれてくる。まるで心を残しながら去ってゆくお方の想いが風にのって届いてくるようだ。すでに夏ではないが、秋と呼ぶにはまだ早いこの季節の境目に咲いているのがもくせいの花である。」
「夜、庭の桜が散りはじめている。満月を一日過ぎた十六夜(いざよい)の月が出ている。天から注いでくる月光が桜の花びらにしみこんで、その重みにたえかねたかのように、花びらが枝から離れてゆくのである。」
心の琴線に触れる、日本人ならではの描写である。

足掛け35年、累計発行部数720万部のシリーズ最新刊「陰陽師 水龍の巻」、
さて今宵はどんなもののけが現れるか・・・

紹介者 山下

著者:夢枕獏
出版社:文藝春秋

在庫状態 : 在庫有り

販売価格  ¥1,650(税込)

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